「食べる」ことは「生きる」こと
大野浦病院が“食”に懸ける想い

#04
医療法人社団明和会 大野浦病院
会長
久保隆政
医療法人社団明和会 公式アンバサダー
サンフレッチェ広島
森﨑和幸
COLUMNコラム

信頼関係から生まれる気づき。「その人らしさ」を支える訪問ケア

“一日会長”として訪問看護・訪問リハビリの現場視察を終えた森﨑和幸さん。久保会長との振り返り対談の中で、森﨑さんは「病院内だけで医療が完結していると思っていたが、退院後もここまで患者さんに寄り添いサポートを続けていることに驚いた」と率直な印象を語りました。

現場で目にしたのは、単なるバイタル測定やケアにとどまらない、深いコミュニケーションでした。会話を通して患者さんの悩みや体調の変化といった「小さな気づき」を得ることが、次の適切な医療・介護へとつながっていきます。
また、訪問リハビリでは、自宅周辺の歩行訓練だけでなく、段差の確認や手すりの提案、さらには「今日はどの帽子をかぶるか」といったファッションの選択までサポートしていました。

久保会長は「“その人らしさ”を大切にし、気持ちを上向かせる工夫が生きがいに繋がる」と語り、森﨑さんもまた、日常に戻っていくプロセスを丁寧に支える姿勢に触れ、信頼関係の先にある地域医療の温かさを実感していました。

単なる栄養補給ではない。口から食べる力が拓く在宅復帰への道

訪問リハビリに同行した際、スタッフから掛けられた「大野浦病院が最も力を入れている“食”について学んでほしい」という言葉をきっかけに、話題は医療法人社団明和会・大野浦病院の核となるテーマへと移ります。
久保会長は「大野浦病院といえば“食べること”」と語り、摂食嚥下(せっしょくえんげ)訓練や口腔ケアを通じた支援の重要性を強調しました。一般的に「栄養を取るためのもの」「味が薄く見た目も味気ない」と捉えられがちな病院の食事。しかし大野浦病院では、ただ栄養を摂取するだけでなく、見て楽しみ、自然と手が伸びるような食事づくりに力を入れています。
口を使って自分の力で食べることは、健康の維持はもちろん、その人らしい生活や生きる喜びを取り戻すこと、そして「在宅復帰」へつながる重要な鍵となるのです。

多職種が一丸となって挑むリハビリ。大野浦病院が“食”にこだわる原点

大野浦病院が「食」に注力する背景には、約25年前に久保会長と現スタッフが抱いた強い感動体験がありました。当時は口から食べられなくなると点滴や胃ろうに頼らざるを得ず、口を使わないことで徐々に寝たきりになってしまうケースも少なくありませんでした。
「口から食べて、もう一度その人らしさを取り戻してほしい」。その想いから、言語聴覚士(ST)を中心に、医師、看護師、管理栄養士、介護スタッフが一体となる「多職種連携」の取り組みがスタートしました。
かつて、十分に会話もできず寝起きを繰り返していた患者さんが、スポイトで1滴の水から始め、アイスを使った訓練、やがて固形物を食べられるまでに回復。3ヶ月後にはご家族へ「ありがとう」「おいしい」と声をかけ、笑顔を取り戻したといいます。
「食を通して人と家族をハッピーにする」。その原点を共有した森﨑さんは、「使わない筋肉が衰えるのはサッカーも同じ。口を動かし、食べる力を育む大切さがよく分かりました」と深く感銘を受けていました。
次回、森﨑さんは「食」の最前線である病棟の食事風景と訓練の現場へと向かいます